21 世紀の安全で安心な社会構築に貢献するためには,様々な構造機器に使用される材料の損傷や欠陥を早期に検出し,適切な材料交換や修復を実現することが不可欠である.このためには材料損傷メカニズムを解明し,その予兆となる信号を検出する手段と,微小な欠陥を確実に検出する手段の確立が必須課題となる.特に材料の損傷は局所的に発生することが多いため,微視的な非破壊評価技術の開発が望まれている.そこで当研究分野では大型構造物を中核に,様々な機器を対象とした計測・評価技術の開発を推進している.さらに,損傷を引き起こす実働負荷のin-situ 計測技術の開発も推進している.
高速回転物表面に作用する実働負荷振幅を非破壊非接触で計測する技術を開発している.微細組織を制御しためっき銅薄膜の組織がひずみエネルギーの蓄積で変化する状況を観察することで,負荷振幅と負荷の主軸方向を定量的に評価できる見通しが得られている.
鉄道用車軸においては,疲労き裂が車輪との勘合部に発生することが危惧される.このようなき裂を検出するため,非破壊評価用センサはき裂が離れた位置(少なくとも5mm)に配置する必要がある.電位差法の一つである集中誘導型交流電位差法(ICFPD) は,このようなき裂を検出できる可能性を有する.本研究においては,き裂に対して水平方向にピックアップピンを配置したICFPD 法を鉄道車両輪軸勘合部のき裂検出に応用し,評価を実施している.
従来の手法では検出困難な配管溶接部裏面に発生する応力腐食割れ等の結果を評価可能な非破壊検査手法の開発を行っている.本手法は,従来の交流電位差法を改良することにより配管裏面まで電流を供給し,表面から計測可能な技術である.